2012年10月02日

インタビュー:「憲法審査会」ってなあに?

まず、憲法審査会に行ってみての感想や印象に残った点を教えてください。

■I さん 私はこの間の5 月に初めて行ってみたのですが、議員の紹介状がないと傍聴できないということを知らなくて、とても驚きました。他にも、録音はNG でしたし、傍聴券チェックが2 回、ロッカーに貴重品を預けて、尚且つ金属探知機と持ち物検査…。議員の紹介状が必要な時点で、国民全員に与えられた権利ではないと感じましたし、ここまでいろいろあると、国民を信頼していないのだろうなという印象を受けました。

■ N さん 傍聴席に行くまでに、迷路のような通路を歩くのですけど、道順を外れると守衛さんにすぐ連れ戻されましたね。帰りも同じでした。あと、毎回思うことは、審査会の開催の案内がギリギリなことですね。早くて大体1 週間前、前日のこともあって、一般市民に来てほしくないのかなと思っちゃいます。


審査会の進行方法や議論内容はどのようなものでしたか?

■ I さん 私たちが参加したのは5 月31 日に行われた審査会だったのですが、内容は“9 条”のものでした。傍聴者はざっと100 名はいたかと思います。予想よりいっぱい来たみたいで、立ち見の人もたくさんいたし、資料の増し刷りもしていました。
 流れとしてはまず、官僚の企画部長から15 分間、なぜ憲法審査会を行うのか、そして論点をまとめた資料の説明、各党議員の意見表明が7分ずつ、そのあとは、議員からの意見を自由に話すといった感じです。
  議員の意見表明や自由討論を聞いていると、法律を変えれば済むようなことなのに、わざわざ憲法を改正しようとしているんですよ。あと、議論の内容を聞いていて思ったのは、憲法は権力を縛るもの・法律は国民を縛るものじゃないですか。縛られている側の政治家が、憲法を改正したいというのはおかしいし、自らを解放したいと言ってるようなものですよね。
 憲法のあり方を考えれば、議員がどうこう言うのではなく、国民が国を統治する権力をどうコントロールしたいのかを本来ならば議論すべきものであって、だからこそ憲法審査会っていうのは国民が考えるべきもの。議員が考えるものではないんですよ。

■ N さん 今の現状と憲法は合っていないから憲法の方を変えちゃおうではなく、憲法はその
達成を目指していくものなので、そもそも発想がまちがっていますよね。達成可能なものなら、わざわざ憲法に示さなくていいのに…。今の現実と憲法が違うのは当然であって、現実を前提に憲法を変えるのは本末転倒ですよね。時代に
合ってないのではなくて、権力側は憲法の理念を実現する努力もしてこなかったし、それができていないから時代のせいにしているんです。
 よく、アメリカが作った憲法だから日本人の主権で作らなきゃだめだとか聞きますけど、今改正をしようとしているのにも、アメリカからの圧力がかかっています。改憲を推し進めている政治家に、そこのところを詳しく聞いてみたいですね。


今回の審査会で話し合われたことは、今後どう取り扱われていくのですか?

■ N さん 事前にいただいていたこの質問を見て、はっとして調べてみたのですけど、審査会のホームページを見ただけでは分かりませんでした。審査会の目的は、「憲法の広範かつ総合的な調査」と書かれているのに、それすらやっているのか疑問です。議員の憲法理解や調査の質のレベルにはかなりの格差がありますし、とくに新しい党は、党の代表として審査会へ議員を送りだしているにも拘らず、議員の意見は世論や与党に日和見的。党の理念がなかなか見えません。

■ I さん おそらく国民投票法で憲法審査会が規定されているから開催しているという既成事実作りという感じですね。開催日時も、平日の日中のうえに、開催日程はギリギリに発表。国民に知ってもらいたいなら、もっと働いている人にも来やすい日時を設定しますよね。


発言の機会もない審査会にあえて傍聴する意味はなんですか?

■ I さん 今回の審査会のように、傍聴者の人数が多いと、それだけ場内の緊張感が増します。議員の方に、国民がこんなに関心があるんだよということ、また、ちゃんと見てますよというアピールになると思います。

■ N さん 本当にそういうことが大事で、傍聴している私たちは意見を言うことができないけれど、勝手には決めさせませんよっていうことが伝わると思います。それに、審査会で飛び交う言葉を聞いていても分からないことは多少ありますが、例えば“軍隊”という単語が聞こえたら、危なっかしいと感じて、そこの部分は配布資料をちゃんと読んでみなければという気に
なりますよね。そうやっていくと、憲法は自分の生活とかけ離れたものではないということが分かり、意識が変わってきたと思います。


傍聴して、若い人に伝えたいことはなんですか?

■ N さん もし、憲法が改正されて一番影響を受けるのは、今これを議論している人ではなく、若い人たちなのです。それなのに、その若い人たちがいない場で話し合いが行われています。なので、特に若い層の方に知ってもらうために、ツイッターなどで審査会に参加した人の感想を載せるなどして、広めていければいいですよね。知り合いの高校や大学の先生がいれば、クラスで傍聴に来るように声をかけるのはいい
アイディアだと思います。

■ I さん 憲法というのは自分の生活とかけ離れたものではなく、もし改悪されてしまったら、自分がこう生きたいと思う道を阻むものにもなりかねないものであり、自分には関係ないというスタンスではいられなくなります。だからこそ、若者には今のこの状況を知っていて欲しいですし、そのためにも憲法審査会に行ってみて欲しいですね。政府側も、あえて難しい表現を
使ったりしていると思うので、そのための勉強会を開くなど、いろいろな形で発信していければと思います。



*NさんとI さんは30 代のYWCAの会員です。
 インタビューアー:清水・平澤(広報委員)



           ***憲法審査会***
 2007 年の日本国憲法の改正手続に関する法律(国民投票法) の成立
を受けて、新たに衆参両院に設置された機関。 両院にはこれまで、憲法
一般について「広範かつ総合的な調査」を行う「憲法調査会」、次いで
国民投票法を議論する「憲法調査特別委員会」が設けられてきた。 憲
法審査会はこの2 つを引き継ぐ機関であり、初めて「憲法改正原案、憲
法改正の発議」を審議できると規定された、憲法改正を具体的に進めて
いく場と位置づけられる。(出典: 知恵蔵2012)


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Posted by 横浜YWCA at 09:21│Comments(0)その他
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