2011年12月28日

インタビュー:女性弁護士だからできること

                       
 白石 美奈子 さん(横浜弁護士会)

10月第3週の非暴力週間には、毎年、世界各地のYWCAで、女性への暴力をなくすためにさまざまなプログラムが行われています。
日本でも、結婚したことのある女性の3人に1人が配偶者から何らかの暴力を受けた経験があると、内閣府が2008年に行った調査でわかっています。女性への暴力をなくすために行動する非暴力週間にあたり、弁護士で、横浜YWCAが取り組む暴力を受けた女性のための支援事業「ゆう」のメンバーでもある白石美奈子さんにお話を伺いました。


1. 弁護士として、どのようなお仕事をされているのですか?

ドメスティック・バイオレンス(DV)被害と犯罪被害に関することが多いです。もともと犯罪被害者支援をしたくて弁護士になりました。殺人事件や性犯罪といった犯罪被害者支援をするなかで、DV被害に関わることも大きな意味での犯罪被害者支援だと思うようになり、関わるようになりました。
横浜YWCAでは、暴力を受けた女性のための支援事業「ゆう」で、離婚講座と弁護士相談をしています。

2. なぜ離婚講座を?

何となく離婚を考えていても、どうやって進めるのか、何を決めておかなくてはいけないのか、ご存じない方が多いんですね。本を読んでもわからないことが多い。離婚するのかしないのか、自分のことを決める材料として、そういう知識を持っているのと持っていないのとでは、精神的な強さが全然違います。ですから、必要最低限の情報をお知らせしたいと思っています。

3. 他の離婚講座との違いは?

他のところの離婚講座と、お話ししている内容は同じだと思います。違うのは、講座の後に講座で話をした弁護士に相談ができるというところです。離婚は人生の一大事です。その離婚を決めようという時に、初めて会った人に依頼するというのは不安です。でも「ゆう」の離婚講座では、講座を聞いて、この弁護士はこういう考えなんだなとか、こういう人なんだなということがわかって、その上でその弁護士に相談したり依頼したりできるんです。
DVのことに触れる時間も多いですね。参加者の質問などを見ていると、身体的暴力があったり、身体的でないにしても精神的な暴力を受けている方も多いです。ですから、DVのことは少し詳しくお話ししています。DVじゃないと思っていたけれども、講座を聞いて、自分はDVを受けていると気づきました、と相談に来られる方もいます。
参加者が女性限定で、皆さん自分の離婚の相談をしたくて来ている方々なので、話す弁護士としても女性の側に立って自由に話せるということがあるかもしれません。男性もいる講座だと言えないこともありますから。
参加者も5人から10人と、こじんまりした規模なのもいいと思っています。これが30人とか50人とかだと、委縮してしまう方もいますから。

4. これからどうして行きたいと思っていますか?

DVに関していえば、もう少しDVを担当できる女性の弁護士を増やしていかないといけないと思っています。暴力を受けた女性なので、やはり女性に相談したいという人が圧倒的に多いんです。けれども女性の弁護士でDVをやる人はまだまだ少ない。危険だというイメージがあるということもありますし、実際危険ですから。
性暴力被害に関していえば、ワンストップセンターをつくりたいなと思っています。
ワンストップセンターというのは、性暴力被害に遭った方が、とにかくそこに電話をすれば今後どうしたらいいかという多方面からのいろいろなアドバイスを受けられる、そういう窓口のことです。その番号に電話をすれば、刑事手続きの説明を受けられて、場合によっては警察につなげることもできる、カウンセリングも受けられる、緊急避妊薬を処方してくれる信頼できる病院も紹介してもらえる、いつも味方になって動いてくれる支援者や代理人として動いてくれる弁護士も紹介してもらえる。窓口を一本化したいということです。
被害に遭った方は、被害直後やはり混乱しています。まず、どうしたらいいのか、わかりません。どうしていいかわからないまま時間が経ってしまって余計に言い出しにくくなるんです。ですからとにかく被害直後の混乱している時に、ここに電話すれば、ほんの少しでも安心できる、そういうものが必要だと思っています。
それに、やはり二次被害*に皆さんあちこちで遭っています。病院でイヤなことを言われた、警察でも傷つけられた、弁護士にもイヤなこと言われた、そういう話をよく聞きます。ですから、性暴力被害に詳しい専門家が集まっている、そこに連絡をすれば少し安心できますよ、というものをつくりたいんです。

5. YWCAにはどのようなことができると思いますか?

支援者としての役割が担えればいいなと思っています。
それから性暴力被害に遭った方が、ちょっと不安になった時に行ける場所になるといいと思います。被害に遭った方は、やはり男性に対する恐怖がものすごくあります。弁護士も、男性ではなく女性を希望される場合が圧倒的に多いんです。ですからYWCAが、女性の団体であるというだけで、被害に遭った方はとても安心できるのではないかと思います。
長い間フォローアップを続けられるというのもいいと思います。今、県で行っているカウンセリングは10回までは無料ですが、それ以降は自分でカウンセラーを探してください、という状態です。10回のカウンセリングではとても回復しないですし、継続的な支援が必要な方は多いですから、長く続けられる支援は必要だと思います。

*二次被害:犯人・加害者からではなく、被害者が被害の後に周囲からのさまざまな言動によって、さらに傷つけられる状態をさす。(内閣府、『レイプの二次被害を防ぐために』より)
インタビュー 2011年8月12日(金)



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Posted by 横浜YWCA at 11:43 │女性への暴力